インプラントの基礎知識

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チタンと生体

インプラントと生体

 体内における創傷治癒では、上皮(口腔内では歯肉)を貫通して体内に挿入された全ての異物は、その異物表面に沿って増殖する上皮によって囲い込まれて、最後には排出されてしまう。  しかし、 インプラント の場合は抗原性を持たないので、免疫的排除機構を受けることがありません。  インプラントが骨と結合している状態は、病理学的には代謝機能亢進として知られる進行性病変に分類されています。  そのため、感染などによりこの状態に異変が生じると、非自己の排除機構に組み込まれて、 インプラント は失敗に至る。  

インプラント材料

 インプラント の材料としてチタンは、
・材料強度が高く生体の弾性係数にも近いという力学的特性に優れていること
・酸化チタンの膜が不動態皮膜を形成して耐食性にも優れていること
・チタン表面のエネルギーが高いので細胞接着能力が高いこと
・チタン表面に骨の無機成分と類似した燐酸カルシウムを析出させる能力(バイオミネラリゼーション)があること
という点で、優れた生体適合性を有する材料です。

 また、 インプラント の表面形状や性状が、骨伝導能を大きく左右するということが分かってきました。
CAD/CAMのよる1次加工でネジ山を作ったり、更に2次加工をして表面を粗面にしたり、色々な工夫がなされています。
よく使われる表面加工には、チタンプラズマ溶射、サンドブラスト、酸エッチング、陽極酸化などが挙げられます。
          インプラント 力学的適合性と界面適合性

オッセオインテグレーション

 骨の中に インプラント を植立すると、 インプラント と生体との間に骨組織の治癒が起きる。  軟組織の介在無しに、インプラントと骨組織が直接的に接触していて、かつ、それを持続している状態です。  これを骨結合オッセオインテグレーション)という。

組織学的には骨接触率は50〜60%で、しかも常に変化しています。  接触している骨組織以外のものは、血管結合組織や脂肪組織です。

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骨組織では

 インプラント の表面は2000Åの厚さの酸化チタン膜で覆われている。  そして、 インプラント 周囲の骨細胞から分泌されたムコ多糖類(グリコサミノグリカンという糖類と非コラーゲン性のタンパク質が結合した物)が、インプラント表面の酸化膜を覆っていき、そのムコ多糖類の層に骨芽細胞が類骨を添加して行くのです。 (骨結合の成立)

インプラントと骨の結合
 ムコ多糖類の中には、オステオカルシン、オステオポンチン、という接着性タンパク質が含まれている。  これが骨結合に大事な役割を果たすのです。  インプラント 表面の酸化チタン膜にはカルシウムイオンがくっ付いて、このカルシウムイオンと接着性タンパク質が結合します。  一方、骨組織内の骨芽細胞表面には接着性タンパク質を認識するレセプター(インテグリカン)があり、これがムコ多糖類の中にある接着性タンパク質と結合します。  骨芽細胞以外では、骨内のカルシウムイオンが、やはり接着性タンパク質と結合します。




この結合過程が進行している時に、
     インプラントがしっかりと固定されて動揺が無い!
     インプラント周囲の血液供給が豊富である! 
という条件が整っていると、、この骨結合の成立過程が数ヶ月間継続して、骨結合の獲得となります。

 一旦、骨結合を獲得すると、インプラント表面の酸化チタン膜と骨組織の間で酸素イオンの交換が持続して起こり、長期的に骨の改造現象がゆっくりと続くことで、骨結合(オッセオインテグレーション)が維持されている。

軟組織では

 粘膜下固有層の結合組織部分が、細胞成分の少ない瘢痕治癒の状態で インプラント と密に接触します。
歯肉繊維も、天然歯では通常見られる歯牙と直行するようなものは無く、インプラントと並行に存在します。
そして、結合組織から発生した重層扁平上皮が半接着斑(ヘミデスモゾーム)により、、長い上皮付着の状態でインプラントと接触します。 ( 天然歯と較べるとその数は少ない。 )  インプラント においても、天然歯で見られるような生物学的幅径を確認することが出来ます。
          インプラントにおける生物学的幅径
 インプラント 周囲の結合組織には、コラゲナーゼ耐性のX型コラーゲンが多い。  しかし、インプラント周囲の上皮は、その細胞間隙が天然歯の付着上皮よりも広くて鬆粗である。  また、上皮自体の透過性も高く、上皮の増殖力も数分の1であると考えられている。
そのため、細菌や外来性物質の侵入が容易で、インプラント周囲の上皮の防御力は、天然歯の1/2〜1/3であるという見方もある。

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